地域の不動産会社は人と想いを繋ぐ「人の仲介」 -明海大学キャリアデザインで講義-
全宅連
国内で唯一不動産学部を有する明海大学(千葉県浦安市)では、「不動産キャリアデザイン」授業の一環として不動産業の実務家による講義を行っています。本会からも毎年講師を派遣していますが、今回は大阪府宅建協会会員の丸順不動産㈱社長の小山隆輝氏が講師を務めました。
丸順不動産㈱は大正13年に創業し平成24年に小山隆輝氏が3代目の代表に就任。大阪市阿倍野区で既存建物を活用した地域価値向上に取り組まれ、平成27年にはハトマークグループに掲げる地域貢献活動等の実践に関し全宅連総会で表彰されています。
講義では、取り組みのきっかけや動機、取り組む上での基本的な考え方、さらに具体的な取り組みを8つに分けて紹介しました。
小山社長は20年以上前から、将来訪れる人口・世帯数の減少が不動産需要を縮小させ、自社の商売、更にはその商売をする地域までも衰退させてしまうと予見し、危機感を持っていました。
地域の不動産会社だからこそできることを模索していたときに、1件の長屋再生への関わりから地域の長屋が貴重な地域資源であること、そしてその活用の可能性に気づかれました。以後地域の長屋等既存建物の再生・利活用を通じた地域価値の向上に取り組まれています。
小山社長曰く「地域価値の向上」とは「住みたい街・選んでもらえる街」になること。そのためには、「街によき商いをつくり、育て、守ることにより、住民が豊かさを実感できること」が必要と捉えられています。具体的には、①まちのコンセプトをつくり、②まちをデザインし、③コンセプトやデザインに合う「人」を選ぶ これらの考え方を基本として「住みたいまち」づくりに取り組まれています。
この既存ストックを活用した地域価値の向上は、大阪のみならず既に全国的な広がりを見せています。特に、街を変えたい想いの若者が自らのリスクで既存ストックを取得し改修・活用に取り組む動きが今後もますます加速すると考えられる一方で、多くのエリアでは地域の不動産会社がこの動きに入っていない、と小山社長は指摘します。さらに、既存ストックを活用し地域価値の向上を通じた収益機会確保の事業展開は既に大手不動産会社も取り組み始めている中で、地域の不動産会社に求められる役割とは何か。小山社長は「街の入口として、人とその想いを繋ぐ街の触媒(ハブ)になること」といいます。単なる建物(箱)の仲介ではなく、オーナーとテナントそれぞれの人、そしてその想いを仲介するのがこれからの不動産業の仕事であり、「人の仲介」と小山社長はご自身の取り組みを表現されました。
講義の最後に小山社長からは、「地域の価値は地域の不動産会社がどう行動するかで変わっていく。これからは地域の不動産会社が活躍する時代。先ずは基本の業務をしっかり学びつつ、地域全体を考える視点を持ってください。」と、これから業界を担う学生にエールを送りました。
なお、小山社長の取り組みは、全宅連不動産総合研究所 平成26年度「災害時等における地域貢献活動や地域社会の活性化に係る取り組みに関する調査報告書」の86頁以降にも掲載していますので、詳細はこちらをご確認ください。
https://www.zentaku.or.jp/research/report/research_project/archive2014/
2016.11.25