一般社団法人大阪府宅地建物取引業協会/大阪府宅建協会エリアリノベーションスクール

地域を魅力的にする取り組み

<取材日:2021年11月25日>

 

会員のネットワークを強固にし
スケールメリットを生かす

人・すまい・地域をつなぐ懸け橋になり魅力的なまちづくりに貢献する

 

一般社団法人大阪府宅地建物取引業協会(以下「大阪宅建」という)は、2015年に大阪宅建ビジョンを策定し、ビジョンからバックキャスティングした各種ビジネス交流会や会員アンケートの実施、Osaka Metroとの提携やボランタリーチェーンTAKTAS.の構築など、先進的な取り組みを行ってきた。各事業の狙いやその背景について、高村永振会長に聞いた。

 

・Osaka Metroとまちづくりに関する共同事業を実施

・ボランタリーチェーン「TAKTAS.」を展開

・TAKTAS.について

・エリアリノベーションスクール

 


 

Osaka Metroとまちづくりに関する共同事業を実施

─全国の宅建協会の中でも、先進的な取り組みをされていますが、その原動力はどこから生まれるのでしょうか?

イメージキャラクター「たくっち」

 私たちが感じている問題意識としては、まず大手の寡占化があります。中小零細不動産会社の社数のシェアは64%ですが、市場のシェアは19%しかありません。次に、人口減少と高齢化です。そのため、今後会員数の減少が想定されるなかでの協会運営を考えていかなくてはなりません。一方、不動産業界に必要なのは、人脈作り、資金調達、情報の獲得です。また、協会の役割として、会員に対する管理組織としての側面と、事業支援組織としての側面を両立していく必要があります。そこで、人脈と情報を広げる事業、いわゆる会員が同じ“同志”だと意識できるような環境作りを構築していこうと、 ボランタリーチェ ーンのTAKTAS.やOsaka Metroさんとの事業を立ち上げました。

 また、協会運営では私たち役員が舵を取りますが、要となるエンジンは協会の職員が職責を全うしています。当協会の場合、職員が率先して素晴らしい仕事に取り組んでくれています。

 

 

─Osaka Metroと事業提携した背景や目的について教えてください

大阪宅建ビジョン

 丸順不動産㈱の小山社長が、Osaka Metroさんと取り組むエリアリノベーションプロジェクトの話を当協会にもちかけてくれました。そして、Osaka Metroさんと当協会が協力し、組織的に取り組むことで双方のメリットが生まれると判断し、業務提携することになりました。Osaka Metroさんは、沿線の地域を活性化したいという想いが強い企業ですし、当協会も大阪宅建ビジョンを策定し、“人・すまい・地域をつなぐ懸け橋”になり、人が集まる魅力的なまちを作ることを掲げていましたので、Osaka Metroさんの企業理念とこのビジョンが一致しました。

 

─この提携で、どのような効果を期待しますか?

 まず、協会の存在価値を高めることができると思います。そして、何よりも会員企業に具体的なビジネスチャンスが生まれるということに大きなメリットを感じます。実際に、会員の管理物件を借り上げるという話も進んでいますし、両者が同じ目的に向かうということで、大阪の地域活性化にとってシナジー効果が生まれると思います。

 

 

ボランタリーチェーン「TAKTAS.」を展開

─協会内にボランタリーチェーンを立ち上げました

 大阪宅建ビジョンを協議する中で、不動産業界をもっとよくしていこうという志のある会員を中心に、“ハトマークショップ”というフランチャイズチェーンを作ってみないかというアイディアがでました。その後、3,000名にものぼる回答を得た会員ニーズアンケートや、約1,000会員が参加したビジネス交流会で直接意見を聞くと、やはり「相談できる仲間がいない」「物件情報が回ってこない」「ネームバリューがない」「日々の業務の効率を上げたい」といった意見が多かったことから、関西不動産情報センター(KRIC)※1の考え方なども参考にし、会員間の横のつながりを意識したボランタリーチェーンを構築することにしました。

 このチェーンに加盟するメリットは、BtoBでの物件情報の共有はもちろんですが、掲示板などを設け、会員間でいろいろな意見や悩み事などを交換できるようにしましたので、仲間意識を高めるとともに、知識やノウハウを深め、ビジネスに生かすことができます。

 

─大阪宅建協会として今後の取り組みについて教えてください

 会員数は今後増えることはないという前提で考えると、協会内部については、月並みですが無駄なものは省いていくことが必要です。本部と支部の位置づけを見極め、本部でやることと支部でやることが重複しないようにする一方で、会員のお世話が直接できるのは支部組織ですので、支部が機能不全にならないよう本部でしっかりした支援体制を構築したいと思います。また、大阪宅建は委員会の活動に重きを置いており、ビジョンの実現のためにこれまでの委員会構成を一新しました。また、委員会活動の伴走や、日常業務を担う事務局体制も、ビジョン実現のために職員が自分たちで考えて再編しました。現在、当協会は「会員ネットワークの強化」「デジタル化の促進」「事業のスマート化」の3本の柱を立て、まず会員ネットワークの強化のためにOsaka Metroさんとの提携やTAKTAS.の構築を行いましたが、他の戦略についても今後新たに事業を組み立てていきたいと思います。

 

※1 関西の不動産流通業界の合理化・近代化と不動産取引の信頼性と安全性を確保することを目的に、1969年4月に設立。

 

TAKTAS.について

一社ではできないことをネットワークの力で!

(一社)大阪府宅地建物取引業協会 

創造戦略部 部長

阪西洋一 氏

 

 

 

 TAKTAS.は当協会で2020年12月からスタートしたボランタリーチェーンです。名称の由来は、宅建協会の“タク”にプラスするという“タス”で、会員のみなさんで知識やノウハウをプラスして、不動産業界をもっと良くしていこうという想いが込められています。

 TAKTAS.に加盟するメリットは、①加盟店の強みや経験をシェアできること、②加盟店間で物件情報を共有できること、③同じデザインの商標を利用して認知度を向上できること、④デジタル業務ツールを安価で利用できることです。

ボランタリーチェーン創設プロジェクトの様子

 これら4つは、約3000社の会員のみなさんからご回答いただいた現状課題がベースになっていて、ボランタリーチェーンのコアサービスは会員の強みを生かし、これらの課題を解決することを意識しています。いずれも経営資源の少ない中小企業一社ではできないことを、複数社が参加するネットワークによって価値を生み出そうとしており、しかも地域の不動産業界の活性化という観点からも社会的意義も大きいと考えています。

 TAKTAS.のシステムは石川県の(株)クラスコ※1さんがバックアップしてくださっています。ボランタリーチェーンの創設を協議している当時、システム構築については幾度も暗礁に乗り上げました。そんな中、全宅連が発刊している「Renovation2017」でクラスコさんの記事を読み、すぐに連絡しました。小村社長も私たちの依頼をご快諾いただき、現在ではシステム運営の他、バーチャルステージングや賃貸管理ツールなどをOEM提供していただいています。

 また、TAKTAS.ではメンバーサイトにおいて加盟店間の情報交換を積極的に促進しています。物件の情報だけでなく相場や地域情報など不動産にまつわるいろいろな情報交換の場を設けており、実際に加盟店間でやりとりしていただいています。さらに、デザインを統一したファクトシートを用意し、他の加盟店の物件も自社物件のように提示できます。

 加盟店数の目標は設立年度で150社※2、2025年には250社※2とし、質・量ともに大阪府で№1のネットワークになることを目指しています。

 

ネットワークのロゴマーク

統一ロゴ・ブランド

会員のメリット

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリアリノベーションスクール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

高村永振(たかむら えいしん) 氏

1951年、大阪府生まれ。1975年に日拓ホームを設立、代表者に就任。(公社)全国宅地建物取引業保証協会大阪本部 副本部長、(公社)全国宅地建物取引業保証協会常務理事、(公社)近畿圏不動産流通機構 理事、(一財)大阪府宅地建物取引士センター 理事などを歴任。2020年(一社)大阪府宅地建物取引業協会会長に就任。2013年大阪府知事表彰受賞、2014年に国土交通大臣表彰受賞。2017年、黄綬褒章受章。