住まい探しはハトマーク

株式会社SHOEI /山梨県甲府市

地域を魅力的にする取り組み

<取材日:2022年1月21日>

 

地方で豊かな暮らし方を
実現する場を創出する

リノベーションは持続可能な社会を実現する有効な手段

 

・住人参加型のDIYリノベーションに取り組む

・空き家活用相談サイトの立ち上げ

・新しい地方の豊かさを発信する場を創る

・~官民連携~空き家活用ビジネス!

・行政と連携して空き家・空き地の活用に取り組む

 


 

住人参加型のDIYリノベーションに取り組む

─リノベーションに取り組まれた経緯を教えてください

 1997年に父から経営を継ぎ、そのタイミングで宅建業免許を取得。2015年にリノベーション部門『R/SHOEI』を立ち上げました。当時私は日本青年会議所の『国境なき奉仕団』に所属し、バングラデシュ、フィリピン、モンゴルなどで子供の貧困問題に取り組んでいました。なかでもバングラデシュで学校建設に携わるにあたり、世界最貧国の子供が置かれている現状を目の当たりにし、ショックを受けるとともに、「次世代の子供たちがこのような状況に陥らないような環境を創る仕事をしていきたい」と思いました。その後、そのためには何が必要なのだろうとずっと考えていましたが、そこで出会ったのが“サステナブル・ソサエティ”という考え方です。今では当たり前になっている概念ですが20年前当時はとても新鮮でした。そのようなタイミングで、甲府市が中核市移行を目指すにあたりビジョンを策定することになり、その会議の議長を務めることになりました。県民アンケートの実施や、年間数カ所に及ぶタウンミーティングなどを通じて議論した結果、“良好な生活環境の整備と持続可能なまちづくり”を推進するという考え方を根本に据えたビジョンをまとめました。その考え方を自分の仕事に当てはめ、行きついた先の答えのひとつがリノベーションだったのです。

 

─最初に手掛けたのはどのような物件だったのですか

DIYフリーの賃貸アパート「DOWNSTAIRES」

 両親が築36年のRC造の賃貸アパートを持っており、築年が古いことから空室が目立ち、何かいい方法がないかと考え、始めたのが“DIYフリーで原状回復なしの賃貸アパート”です。この物件は学生向けの1Rタイプのアパートで、斜面に建っており、南側は3階建てで北側は2階建ての建物です。特に北側の1階の部屋は、陽当りが悪くて寒く、湿気もひどい部屋で、最初にその中の1室の壁を、見よう見まねで塗ってみました。すると、職人が仕上げたのとは異なり、素人ながらの風合いというか温かみが出て、リノベーションにDIYを組み込んだら人気が出るのではないかと思いました。そこで2階の部屋を改修するにあたり、これまでのお客様に声をかけ、友達を誘ってもらい、珪藻土を使った壁塗りのワークショップなどを開きながら、延べ約50名の方とDIYで部屋を仕上げました。2015年当時は山梨県でもまだリノベーションという言葉は一般的ではなく、DIYとリノベーションを組み合わせた方法は、従来の設計会社や建築会社とは全く違う方法でとても面白いと思いました。

 これをきっかけに、住人参加型のDIYリノベーションの方法で、築170年の古民家を住人が集う場に再生し、体験型のアートイベントを開いたり、築100年の醸造所を生まれ変わらせたり、中心市街地で喫茶店だったところを、女性起業家3名のクラフト作家のために、ジュエリーと革製品の店にするサポートなどをしてきました。このような活動が新聞にも載り話題になったことから、この方法が空き家の再生のみならず、中心市街の活性化にも役立つのではないかと思うようになりました。そこで、『DIYフルサポートシステム』という名前にして事業化することにしました。しかし、DIYによるリノベーションは楽しいのですが、すごく手間がかかりますし、私も現場に張り付くことになるので、年間数棟が限界です(笑)。

 

 

空き家活用相談サイトの立ち上げ

─空き家のマッチングサイトを立ち上げられました

forMiRAIのホームぺージ

 2019年に総務省の『住宅土地統計調査』が発表され、山梨県の空き家率は3回連続で全国1位でした。それを知って、県民としてものすごく情けない気持ちになり、なんとかしようと思いました。当社は宅建業免許を持っていますが、設計事務所と建設業の免許もあります。そのため一般の不動産会社とは違い、設計や建築目線で空き家を見ることができます。そこで、リノベーションの実績が豊富な当社が、空き家を探している人と空き家を活用してほしいと思っている人の相談にのり、双方を結びつける『forMiRAI(フォーミライ)』というマッチングサービスを始めました。

 このサービスの特徴は、従来の不動産サイトの発想を180度変えて、「こういう店をやりたいので、これくらいの広さの空き家を探しています」という、空き家を活用したい人のための“空き家求ム”サイトを作ったことです。空き家を活用してビジネスをやりたい人が、空き家活用相談フォームに希望条件を記載すると、サイト内に情報が公開されます。するとこのアイデアがメディアに取り上げられ、サイトオープン時に非常に多くの応募が来ました。ただ、ユーザー数は多いのですが、空き家の物件調査などに時間がかかり、それをどう解決するかについて社内で議論しているところです。地域の課題を解決する仕事だという気持ちで、やりがいを持って取り組んでいます。

 

 

新しい地方の豊かさを発信する場を創る

─『結』プロジェクトを始めた経緯を教えてください

「結」プロジェクトの完成予想図

 『結』プロジェクトの大家さんとの出会いは、6年前に当社が甲府市の中心地に事務所を出そうと物件を探していた時に、甲府市中心街にある2階建ての古民家で、ボロボロの廃虚のような状態の空き家を見つけ、これを借りたことがきっかけです。その建物を当社でリノベーションし、2階を当社の事務所として使い、1階を転貸してジビエレストランに入ってもらっています。すると工事が終わった際に、大家さんから「愛宕山にまだ空き家がいくつかあるので、見に来てくれないか」と案内されたのが、『結』プロジェクトの物件です。物件は木造平屋建て2軒と鉄筋コンクリート造2階建ての建物が建ち、いずれも築年が50年を超えていました。20年前に大家さんが購入し、少しずつ手を入れていたとのことでしたが、その時は家の中には古い物があふれかえって手の施しようがなく、「無理じゃないですか」と大家さんに伝え、そのままになっていました。

 その後、山梨県の県庁の方から、空き家率ワースト1を解消するために補助金を活用したプロジェクトを始める旨の案内をもらいました。その時、大家さんに案内してもらった物件がピンと来て、3棟同時に申請したところ、県の『空き家活用促進事業』の第1号に認定されました。2020年12月に着工してから10カ月かけて工事をし、2021年の9月に完成しました。

 

─どのような利用計画を立てて改修したのですか

 3棟の建物のうち、南北の2棟(South棟、North棟)を8人が暮らせるシェアハウス棟にし、真ん中1棟(Center棟)をコミュニティ棟としてリノベーションしました。また、愛宕山は「甲斐八景夢見山」と呼ばれ、豊かな自然に恵まれ、美しい景色が広がります。そこで、自然と人間が共存しあう暮らし方ができるよう、中庭には農業を体験できる菜園スペース(パーマカルチャーガーデン)を設ける予定です。

 改修費は最終的に補助金でいただいた金額の倍くらいかかりました。その差額を大家さんが負担するのは難しかったので、当社が10年間分の家賃を前払い家賃として一括で支払うことで、工事費に充当してもらい、当社はその分をシェアハウスの家賃で回収することにしました。また、この物件は平屋の建物だったので、耐震についてはそれほど深刻な問題は起きないだろうと判断しました。このように、古民家を利用して事業を行う場合、どこまで改修に投資をするか、そのさじ加減が難しいところです。

 

ペチカと囲炉裏のある「south棟」

center棟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─プロジェクトの考え方について教えてください

 大家さんは古物商をされており、古くて興味深い道具をいろいろ持っていました。プロジェクトは“持続可能性”をテーマにしていますので、なるべく新しいものを使わず、現場にあるものを徹底して再生しようと考えました。そこで、建物にあった木材や建具を再利用し、故障していた古い道具は修理して、コミュニティ棟には囲炉裏やかまど、五右衛門風呂を、居住棟にはペチカやピザ窯、囲炉裏や薪ストーブなどを置きました。このように建物に備えたのは、少し前の日本のサステナブルな暮らしのルーツを感じる物たちです。そこで、このプロジェクトのコンセプトを「少し昔の日本の暮らしが実際に体験出来る実験場」とし、古くて新しいものに出会うことで、これからの田舎の豊かな暮らしを体験してもらいたいと考えました。

農地作りに多数のボランティアが参加

 さらに、農業とアート(文化・芸術・音楽)を組み合せることで、都会にはない「新しい地方の豊かさ」を発信していきたいと思っています。そこで、建物に隣接している、5年前までは観光ブドウ園でいまは廃業している耕作放棄農地を、ボランティアの協力を得ながら雑草を伐採して畑にしました。そこに県内在住で、綿づくりをしている方に声をかけ、綿の種を植え、収穫し、糸に紡いで藍に染めるというワークショップを行いました。さらに、有機野菜を育てたいという学生がいたので、それも育てています。このように「衣食住のDIY」による循環型の暮らしをここで実現させていきたいと思っています。

 このように、「農のある生活」というものが持続可能な社会を構成する上での近道だと思い、これからも食糧危機やパンデミックなどの災いに強い地域づくりを、遊休農地などを活用して進めていきたいと考えています。

 

─プロジェクトでは、寺子屋も始めました

 私が以前より最もやりたかったのが、子供を対象にした活動です。近くにお寺が二つあるので住職と話をし、演劇をしている女性教師が代表を進んで務めてくださり、一緒に「寺小屋プロジェクト」を2021年4月に立ち上げました。県内在住でユニークな活動をしている人に師匠になってもらい、コミュニティ棟やお寺で子供たちにいろいろなことを教えたり、一緒にアクティビティするイベントを月に1回程度開いています。綿作りの先生はもちろん、私も漆喰の先生になっています(笑)。演劇を教える先生がいたので、子供たちに演技指導をしてもらい、演劇会を開催することにしました。出演するのは中学生以下の子供たちで、脚本は高校生が書き、曲はプロの作曲家に作ってもらいました。『結』の屋外の自然を感じる場所で、子供たちは生き生きと素晴らしい劇を演じてくれました。このように、“空き家の再生”と“遊休農地の再生”と子供たちへの“持続可能社会教育”の3つのプロジェクトをこれからも推進していきたいと思います。

 

─地域コミュニティの再生の場になるのですね

 コミュニティ棟にした建物は、特に夏は暑く冬は寒いうえに、五右衛門風呂なので毎日入るわけにはいかず、現代の人が居住するにはちょっと厳しい環境だったので、居室にはせずにいろいろなことが体験できる場所にすることにしました。そして、ここを地域に開放することによって、入居者との交流も図れるのではないかと思いました。

 このプロジェクトでは着工前から見学者やDIYのワークショップの参加者が800名を超えました。プロジェクト名の『結』は、かつての日本の助け合いの生活様式が由来です。ここで農業やアートを体験し、入居者と地域の人、そして県内外の人たちが助け合い、お金ではない価値でつながる豊かな地域社会を創っていきたいと思います。

 

~官民連携~空き家活用ビジネス!

山梨県県土整備部 住宅対策室

住宅対策担当 副主幹

神田正憲 氏

 

 

 

─制度創設の背景と目的を教えてください

 平成30年の『住宅土地統計調査』によると、山梨県の空き家率は21%で全国一位でした。当県は別荘が多いので空き家率が高いと言われてきましたが、空き家を種別に見ると、それまで住宅の用途等で利用されていた『その他』の空き家の比率が41%と最も高く、5年前の調査と比較しても1割弱、数にして3,000戸も増えていることがわかりました。この『その他』空き家には、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や物置のような状態の低未利用の使えるものも含まれています。

 一方、空き家には、地域に根ざし、長年存在し続けている歴史があり、地域住民にとっても馴染み深い存在であることが多く、こうした空き家の価値・特性に着目し、近年、地方創生ビジネスや福祉転用など空き家活用ビジネスが広がりつつあります。空き家活用の担い手は民間であり、その活用用途が地域の課題解決や地域活性化に資するなど、行政課題にマッチするものについてはその展開を優先的に支援すべきだと考えています。そこで、このような腐朽や破損がない、すぐに使える一戸建ての空き家を活用していこうとする取り組みがこの制度の目的になります。

 

─制度全体の仕組みについて教えてください

活用可能な空き家の募集チラシ

 空き家を活用してビジネスをしたい人がいても、「空き家がどこにあるかわからない」「所有者にどのようにしてコンタクトすればいいかわからない」という壁にあたります。一方で、所有者の中には空き家を誰かに活用してもらいたいと考えている方もいますし、改修にかかる費用も負担となります。そこで、両者をマッチングする仕組みと財政的な支援をする仕組みを考えました。山梨県宅建協会と提携し、空き家を活用したい希望のある所有者からの応募受付と、物件の調査をしてもらいます。一方、県は空き家を活用し、地域活性化等につながる事業を行う「認定事業者(以下、「事業者」)」に宅建協会が調べた物件データを渡し、活用するかどうかを検討してもらいます。その結果、活用したいという事業者がいればマッチングが成立となり、空き家所有者は事業者の協力を得ながら改修計画を立て、県に補助金を申請します。改修工事終了後、所有者と事業者は賃貸借契約を結び、所有者には改修費の補助金と賃料収入が入り、事業者には事業からの売上げが入るという仕組みです。事業者との契約形態は賃貸借の他、所有者が事業者に運営委託するという方法も可能ですが、認定事業者による所有は認めていません。また、対象物件は、戸建てに限らず、賃貸物件や倉庫などでもよく、元と違う用途として使うのであれば可能です。補助金の提供は10年以上事業として運営することが条件ですので、その間は毎年報告書を提出してもらいます。

 県が認定する事業の主な条件は、空き家を活用して地域の活性化に資することと、山梨県内の複数の市町村で事業を実施することで、事業者の企業の規模や本社所在地、事業の実績などは問いません。ただ、マッチングにあたっては個人情報を提供することになるので、県の認定を受けた事業者ということにしました。

 県が提供する補助金は2種類あります。どちらも、事業者に空き家を10年以上提供する目的で行う改修費用が対象になり、所有者に支払われます(個人限定)。補助率は、特別枠が上限500万円(改修費用の3/4以内)、通常枠が上限250万円(同2/3以内)です。前者は地域の活性化に資する事業に加え、移住・二拠点居住・関係人口の増加など、東京の一極集中是正を図るもの、後者は単純に地域の活性化に資する事業としています。

 所有者の募集は、全県に新聞広告を出したり、空き家の実際の改修の様子をレポートしたテレビ番組の放映、新聞折込チラシなどで行いました。今回この事業では100件を上限に募集しましたが、既にほぼそれに近い応募がありました。

 

 

 

行政と連携して空き家・空き地の活用に取り組む

(公社)山梨県宅地建物取引業協会 会長

(株)長田興産 代表取締役

長田 満 氏

 

 

 

消費者支援業務委員会 委員長

富士河口湖不動産 代表

古屋英幸 氏

 

 

 

 

─山梨県宅建協会は空き家の解消について山梨県を始め各市町村と強い協力関係がありますが、その秘訣について教えてください

長田氏山梨県宅建協会は既に県内27市町村のうち、20市町村と空き家バンクの媒介に関する協定を締結しており、各市町村の事務取扱責任者(宅建協会の会員業者)が取りまとめ等を行っています。また、2012年から、協定を締結している市町村と県の担当者と合同で、「空き家・空き店舗バンク事業 意見交換会」を実施しています。内容としては、空き家バンク制度に関し、先進的な取り組みを行っている他県の市町村の担当者等を招聘した講演会や、事前アンケートによる現況報告、補助金制度の概要・実績等に関する意見交換などを行っております。各市町村の間には空き家の解消問題に対する温度差やノウハウの差があることから、お互いの悩みや対応策をキャッチボールできるこの会は非常に好評で、会議終了時間が来ても議論が終わらないほどです。やはりほぼ全域に会員が在籍する宅建協会ならではの取り組みだと思います。

 その背景にあるのは、『住宅土地統計調査』が発表される度に、山梨県の空き家率が全国で1番になっていることが挙げられます。その危機感を行政も民間企業も共有しており、「何とかしなくてはならない」という動機付けになっていると思います。

 

─山梨県の『活用空き家調査等業務』にも協力されていますが、その業務委託内容について教えてください

古屋氏昨年から始まった山梨県の『活用空き家調査等業務』において、宅建協会が業務委託を受けて行っている業務は3つあります。1つ目が、活用希望空き家の受付等業務です。専用ウェブサイトの設置や、電話等の問い合わせに対し、本業務の趣旨等の説明を行うなど、空き家の所有者から空き家情報の受け付け等を行います。2つ目が、活用希望空き家の物件調査業務です。物件調査にあたっては、宅建協会で募集した物件調査員が、所有者のところに出向き空き家の調査を行い、その結果に基づき物件カードを作成し、宅建協会に提出してもらいます。3つ目が、空き家所有者と認定事業者とのマッチング支援等業務です。認定事業者に対し、物件カードの情報提供や活用意向の確認等を行います。認定事業者から「物件を見たい」「活用して事業を検討したい」と連絡が入れば、宅建協会が所有者と交渉に向けた調整を行い、マッチングを支援します。

図1 活用空き家調査等業務の流れ

 マッチングまでの流れは図1のとおりです。『①空き家所有者より、空き家の情報を宅建協会へ提供→②宅建協会が地域担当の物件調査員に調査を依頼→③所有者立ち合いのもと、物件調査をし、物件カードを作成→④調査の結果を宅建協会に報告→⑤認定事業者に対し、物件活用意向確認書と物件カードをメール→⑥認定事業者は活用意向の有無を宅建協会に回答→⑦宅建協会から活用意向を所有者に報告→⑧活用意向無の場合、空き家バンクの活用を案内→⑨活用意向有の場合、宅建協会が所有者に連絡し、認定事業者と所有者で現地物件確認等の交渉を実施→⑩条件が合致すればマッチング完了』この一連の流れを1カ月弱で進めます。

 認定事業者は県が認定しますが、ADDress様は2年前に開催したオール山梨 空き家セミナー&無料相談会2019の先進事例セミナーの際に講師を務めていただき、県と意気投合したことから認定事業者になったという経緯があるようです。また、令和3年12月時点では、認定事業者が10社となっております。

 

─物件調査員制度はどのようなものですか

古屋氏山梨県と当業務に関して業務委託契約を締結したので、物件調査員として空き家の調査を行ってもらえる方に手を挙げてもらいました。物件調査費用については1万5,000円を支給します。理事の中でも多くの方から手が挙がりましたので、報酬を受け取ることが公益法人として利益相反にならないよう法令順守を徹底しました。山梨県が宅建協会に業務委託を依頼した理由は、山梨県のほぼ全域に会員が在籍することです。物件調査員が存在しない市町村については、同一ブロック内で隣町の物件調査員が対応するようにし、全域を網羅するようにしています。

物件カード作成例

 所有者から空き家情報の連絡が入ると、市町村別の名簿順に調査をお願いします。その際徹底しているのは、「物件調査員は媒介業務には関わらない」ということです。空き家の所有者に直接会うわけですが、あくまで物件調査員としての役割に専念してもらい、自分の商売に直接結び付けないようお願いをしています。所有者は県の仕組みを使い、地域のために物件を活用してもらいたいと思っているのに、現地に来た物件調査員が「高く売ってあげるよ」というような話をするとトラブルの原因になるからです。ただし、認定事業者の中には宅建業免許を持っていない認定事業者もいるので、マッチングの過程で認定事業者から賃貸借の仲介の依頼があれば調査とは別に仲介業務を行う事は可としています。

 

─今後、空き家対策についてどのような取り組みを検討されていますか

長田氏2021年2月に山梨県司法書士会、(公社)成年後見センター・リーガルサポートと相互協力に関する協定を締結しました。今後、不動産の相続問題について相談会などを実施していこうと思っています。市町村とは空き家の流通の面で協定を締結しましたが、空き家になる前の対策について他団体との協力を深めていきたいと思います。やはり、これからは相続が発生したときに、空き家を生まないようにすることが大切です。そのためには、自分たちの財産の扱いについて家族で事前に話し合っておくことが必要です。また、特定空き家に指定された物件には、道路が狭くて再建築不可の物件が散見されます。個々の物件に関する空き家対策だけでなく、その空き家を含めた地域全体をどうしていくのかという再開発を視野に入れた検討も必要だと思います。

 山梨県には、北杜市や清里周辺、富士山を臨む地域など、合わせて2万戸の別荘があるといわれています。幸いにも山梨県は東京都に隣接し、車で1~2時間の立地ということもあり、コロナ禍の影響で二拠点居住をする人の移転先として注目されるようになりました。中古の別荘だと1,000万円を切るものもあり、ローンを組まずに購入できることから、テレワークの間、自然豊かな環境で仕事をしたいという方が購入しています。さらに、そのような素晴らしい環境で社員に働いてもらいたいという企業が本社を山梨県に移転するケースも増えています。この流れを上手く捉えて空き家率ワースト1の汚名を解消したいです。

 

 

 


 

大原勝一(おおはら しょういち) 氏

株式会社SHOEI代表取締役、慶応義塾大学卒業。2015年リノベーション専門部署R/SHOEIを設置。2017年よりDIYフルサポートという全国でも珍しい建築手法を発表。「蚊帳の家」では古民家を、アーティストとDIYのワークショップを同時進行でリノベーション。2020年全国初の空き家を求める人のための不動産サイト「forMiRAI」を発表。同年「やまなし創生官民連携空き家活用事業者」第一号認定を受け、art&agricultureをテーマにした甲府市内の空き家3棟群の再生「結プロジェクト」を完成。

 

 

 

株式会社SHOEI

代表者:大原勝一
所在地:山梨県甲府市古府中町4914-1
電 話:055-252-0033
H P: https://shoei-design.jp/
業務内容:住宅・店舗等の設計・施工、リフォーム、リノベーション工事、インテリア、植栽、不動産(仲介、管理)業務。2015年にリノベーション部門「R/SHOEI」を立ち上げ、DIYワークショップを通じたリノベーションをサポート。2020年空き家マッチングサイト「forMiRAI」を開設。