住まい探しはハトマーク

あつまる株式会社/東京都杉並区

地域の安全性を確保する取り組み

<取材日:2021年7月16日>

 

女性が安心して社会に進出できる
暮らしを創造する

正しい防犯知識が犯罪被害者になることを防ぐ

 

・女性の視点に立った不動産会社を立ち上げる

・正しい防犯知識を身につけ犯罪被害者になる可能性を減らす

 


 

女性の視点に立った不動産会社を立ち上げる

─女性のための不動産会社を始めた経緯を教えてください

女性が入りやすいような入り口の看板

 管理会社に勤めていた時に、仲介会社を通じて契約してくれた方から、「住んでから建物に少し不安があるけど大丈夫ですか」とか「建物について何かあったら管理会社に電話をしてもいいですか」と聞いてくる女性のお客様が何人もいました。本来、仲介会社が事前に管理会社に確認して、そのような不安を取り除いておくのが役割だと思いましたが、やはり不動産の営業は男性が多く、「見当違いの物件をいくつも案内された」「早く決めろというような圧を感じた」とか「一人暮らしの女性というだけで物件はこれしかないと、ほとんど相手にもされなかった」など、コミュニケーションを取るのがなかなか難しかったという声を多く聞きました。また、他社で決めた方から聞いた話ですが、駅から工場の横の道をずっと通って帰る物件を案内されて、男性の担当者に「夜道は人通りが少なく、危険そうですが大丈夫ですか」と聞くと「怖くないです」との返答だったそうです。やはりその回答は女性の不安に対してあまりにも配慮が足りないと感じました。男性の営業でも、女性には2階以上、バストイレ別、独立洗面という条件が好まれるということなどはわかっているのですが、女性の心情であったり、案内の仕方などが、男性と女性では心遣いが違いますので、そこに焦点を当てると喜ばれるのではないかと思いました。

 また、知人が帰宅途中に、通り魔に突然背中を刺されて死亡するという痛ましい事件が起こったことも、独立の大きなきっかけになりました。詳しく話を聞くと、暗い夜道での出来事だったそうです。「もしかすると、その夜道を通る必要がなかったのではないか」「刺されずに帰れるルートが他にあったのではないか」と心を痛めました。夜道の問題もそうですが、本来部屋探しというのは、ただ単に部屋を紹介するだけではなく、住む前に感じる疑問や不安の解消はもちろんのこと、住み始めた後のことまでケアすべきだと思っていましたので、そのようなコンセプトを実現する女性の視点に立った不動産会社を立ち上げようと思いました。

 

─夜道が暗い場所など、事前に物件のリサーチをされるのですか

 開業したての頃は、日没後に駅から物件までの導線を歩いて動画に撮影したり、周辺環境を確認して社内で共有しました。ただ、一人暮らしの女性の場合、駅徒歩10分以内に限るなど、だいたい条件が一緒で物件も限定されるので、社員全員がそれらの物件の場所と内容をよく把握していることから最近はそこまでは行っていません。

 しかし、コロナ禍の中、オンラインで物件の内覧を希望する方もいますので、その場合は、自転車にスマホやタブレットをセットし、動画を撮り、レポートしながら駅から物件まで歩き、その途中の様子を見てもらうようにしています。

 

─女性限定の物件もあるのですか

 女性限定の物件はニーズも限られているため数は少ないですが、地方から出てきて東京で初めて一人暮らしをするという方に、東京での生活に慣れてもらうためにお勧めしています。また別のケースでは、一般のマンションに住んでいて、音に関するクレームを受けてからストーカー化した男性から逃れたいという方を、女性限定マンションに案内したこともあります。女性限定といっても特別な設備があるわけではなく、オーナーが近くに住んでいるとか、入居者が全て女性ということだけですが、それが安心材料であり喜ばれるお客様も多いです。

 

─物件案内の前のヒアリングに時間をかけていると聞きました

 それまでは管理会社にいたので仲介営業をしたことがなく、入居者に何をヒアリングすればいいのかも理解していませんでした。ただ件数を重ね、お客様に家賃や設備の条件などをいろいろ聞いていくと、条件といっても結構“あいまい”だということに気づきました。そこで、ヒアリングに時間をかけるようにし、お客様の漠然とした条件に対して優先順位をつけ、理想と現実とのギャップを埋めながら、その方のライフスタイルを確認し、その人が描く潜在的なニーズを本人に気づいてもらうようにしています。そうすることでイメージにあった物件を探せるので、最終的にとても感謝されます。また、家財道具のサイズを聞いてレイアウトのアドバイスをしたり、家賃が安い部屋の場合、収納の工夫の仕方などについてもお話しさせていただいています。

 

日常生活の注意ポイントを伝える

収納のアイデアを伝える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─お客様はどのような層が多いのですか

 当社に来られるお客様のプロフィールは、初めての一人暮らしの学生、もしくは20歳代で借り替えの方が多いです。最近は40~50歳代の方で離婚や配偶者と死別された方も来られます。

 当社にたどり着くお客様は、他の不動産会社を回ってから来たという方が多いですが、最初に当社に来て物件が少ないので他社に行かれ、最終的に再び当社に戻ってこられる方もいらっしゃいます。また、「あそこに女性専門の不動産会社があるから行ってみたら」とまちの人に紹介されてきたという方もいました。

 

─高円寺に出店されたのは女性に人気のまちだからですか

 高円寺というまちは夜もにぎやかなまちで、一見すると物騒な感じがするまちです。当社は“女性のための安心安全な一人暮らし”をテーマに掲げていますので、ここで活動することに意味があるのではないかと思いました。また、吉祥寺に店舗を出したのは、学生が多いまちなので、地方から出てきた一人暮らしの方のお役に立ちたいという理由です。

 そのため、地方から初めて来られた方には、地域を紹介する目的で手書きの地図を見せながら、一緒にまち歩きをします。「この店は夜一人で飲みに行っても安心だよ」というように、高円寺ではこのような暮らしができるということを伝え、まちのことを理解してもらいます。また、地域のお店のショップカードを置いていたこともあります。

 

 

正しい防犯知識を身につけ犯罪被害者になる可能性を減らす

─女性視点で独自のサービスを提供されています

盗聴器発見器レンタルサービス

 女性が安心して部屋を借りられるサービスとして、希望者には盗聴器発見器をレンタルしています(1日1,000円)。友人の家で盗聴器がつけられていたことがきかっけで導入しました。それ以外にも、物件ごとの夜道動画サービスや大家さんへの苦情代弁サービスも行っていましたが、今は通常のサービスとしてお客様の希望に応じて実施しています。

 また、女性が安心・安全な生活を送るためには正しい防犯知識が必要だと思い、最近はお休みしていますが、地域交流会や、防犯の基礎知識、護身術などをテーマにした防犯実践セミナーを行っていました。同時に“お部屋探しブログ”を開設し、ポストの鍵の選び方、洗濯物の干し方など、一人暮らしだと悟られないためのアイデアや、夜の歩きスマホの危険性、ひったくり防止のためのバッグの持ち方など、日常の注意点を発信しています。三鷹で起こったストーカー殺人事件では、犯人は被害者宅の2階から侵入したそうですが、2階の窓は無施錠でした。私たちは日常の中でどうしても、ちょっと買い物に出る時やゴミ出しの際に施錠に対して無頓着になることがあります。ちょっとした心がけで犯罪の被害者になる可能性を減らせますので、継続して注意喚起していきたいと思っています。

 

─地域との関係づくりも大事にされています

 住民同士のコミュニケーションの多いまちは、防犯上安全なまちになると思っています。私たちは単に部屋とお客様をマッチングしているわけではなく、地域の人と人を結ぶことができるような仕事を目指しています。当社の社名の由来も、“人が集まる”という意味で、そこから“あつまる不動産”としました。あつまる不動産に来た人が地域に住み、その人たちが人を呼び、人と人がつながり、良いコミュニケーションができることで地域が魅力的になり、その結果、犯罪のない社会になることで、女性が安心して暮らせる世の中を実現していきたいと思います。

 そして、安心・安全を感じてもらうのは、物件の紹介だけでなく、日常の仕事の中の全ての場面においてだと思います。当社の場合はお客様のことは笑顔でお迎えしますし、笑顔でお茶を出します。それだけでも、お客様は安心を感じ、私たちに心を開いてくださると思います。また、物件紹介についても、こっそり机の下から出すような“未公開物件”などという考え方は無く、レインズの画面も業者配布図面も全てお客様に見せて物件探しをします。地域密着をモットーにしているので、隠し事はしたくありませんし、まちに住む人が来てくれますので、すべて丸見えにしています。多分、そういうことも安心・安全を感じてくれる要素の一つなのだと思います。消費者にとっては物件選びも大切ですが、それ以上に安心できる不動産会社選びが大事だと思います。

 

高円寺周辺の手作りマップ

メディアに取り上げられる機会も多い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

小泉厚子(こいずみ あつこ) 氏

業界歴15年を経て2014年に開業。仕事で心がけていることは、「心の底からの“ありがとう”を聞くために、対価以上のサービスをお客様ごとに提供すること」「お客様のご要望にとことん寄り添い、お客様目線に立ちながら安全安心そして最適なお部屋をご紹介すること」。日常で心がけていることは、約束と時間を守る、人を大切にする、仕事も遊びも全力で楽しむこと。宅地建物取引士の他、防犯設備士及び行政書士資格も取得。

 

 

 

あつまる株式会社

代表者:小泉厚子
所在地:東京都杉並区高円寺南3-59-12
電 話:03-6454-6313
H P:https://atsumaru-fudosan.com/
業務内容:女性のための、女性の視点に立った不動産会社として不動産賃貸・管理・売買の仲介を行う。防犯対策として、盗聴器発見器のレンタルサービスや、地域の人も巻き込んでセミナーの運営や企画も行っている。高円寺と吉祥寺に店舗を展開。